リポートアニマル・ウェルフェア - 米国における基準と適用

アニマルウェルフェアに関する国際基準

  • 国際獣疫事務局(OIE)は、世界の動物衛生の向上を目的とする政府間機関として知られている
  • OIEは「アニマルウェルフェアとは、動物の生活と死に関する環境と関連する動物の身体的・心的状態」と定義しています。
  • OIEの指針となる原則では、国際的に認識されている「5つの自由」について言及している。これは1965年に発表され、人間が管理する必要のある動物の生活の権利として以下の5つの自由をあげています。
  1. 飢え、栄養不良および渇きからの自由
  2. 恐怖や抑圧からの自由
  3. 身体的・温度の不快からの自由
  4. 痛み・傷害・病気からの自由
  5. 正常な行動を発現する自由
OIE - World Organisation for Animal Health

米国では、OIE基準を基本として動物が取り扱われています。この国際的に認められている基準は、画一的な規定ではなく生産システムの違いを考慮しています。OIEは様々な種類の生産システムについて、集約的飼育(動物は収容され、摂食・摂水が人間に依存する飼育 = フィードロットなど)か、粗放的飼育(動物は自由に動き回ることができ、摂食・摂水を部分的にコントロールする飼育 = 雌牛・子牛の放牧など)か、を識別しリスト化しています。いずれのシステム(またはその混合システム)にも固有のアニマルウェルフェアの障害が存在します。そのためOIEは、1種類の基準をその他に適用するよう指示する代わりに、すべての生産システムでアニマルウェルフェアを評価する測定可能な基準を作成するための基本原則のリストを提供しています。

  • 輸送(陸上、海上、航空)
  • 食肉処理
  • 生産(肉牛、ブロイラー、乳牛)
  • 去勢豚および採卵鶏の取扱い

米国のアニマルウェルフェア - 規則

人道的なと畜に関する法律(HMSA)

  • 米国の食肉処理施設における家畜の人道的な取り扱いを監督する機関は、米国農務省(USDA)の食品安全検査局(FSIS)です。
  • 1901年に制定された「人道的なと畜に関する法律」(HMSA)」に基づき、食肉処理施設で人道的なと畜について管理・監督しています。

人道的なと畜に関する規則

  • FSISの査察対象となる米国内のすべての食肉処理施設には、これらの人道的なと畜に関する規則を施行するため、公衆衛生獣医師(PHV)およびその他の査察官が割り当てられます。
  • 逸脱があった場合、FSISは生産を停止させ、調査対象から外すこともあります。
主な内容
家畜は人道的な方法でと畜しなければならない
人道的なと畜法の調査方法
宗教的・儀式的と畜には適用されない
歩行不能な家畜のケアに関する調査
規則の主な概要
興奮を最小限に抑えた動物の取扱い
家畜を引きずったり、痛みを与える処置をしたりしない
常にすべてのペンに給水する
24時間を超えて施設に滞在する家畜には給餌を行う
と畜前にスタニングを行う

FSISは多数の地域獣医師専門家(DVMS)を雇用し、DVMSは産業界がHMSAを遵守していることを確認し、人道的なと畜に関する問題に対処する専門家としての役割を果たします。DVMSは、12~18ヵ月ごとに、FSISの査察対象となる食肉処理施設で人道的なと畜が実施されているかを確認し、12ヵ月ごとに、家禽肉処理施設で市販に向けた適切なと畜手順が実施されているかを検証します。査察結果は、施設内の調査担当者と共有し、規則遵守および一貫性が確保されるようにします。この現地査察で人道的なと畜手順の逸脱が確認された場合は適切に対処します。

PHVは施設が必要な是正措置を講じていることを確認し、非人道的なと畜手順の事例に対する強制措置を実施します。FSISの施設内担当者は、食肉処理施設内で非人道的な動物の取扱いを発見した場合、必要な規制措置を講じます。

Key Facts: Humane Slaughter | USDA

輸送

28時間法

  • 給餌、給水および休憩のために家畜を車上から下ろすことなく、28時間以上にわたり連続して家畜を運搬してはならない

市販のための要件

  • パッカーの多くは、家畜を食肉処理施設まで運搬する運送業者が、パッカーから、または他の研修モジュール(業界の標準モジュールなど)で動物の取扱いに関する研修を受けるよう要求する
  • 動物の取扱いに関する逸脱(トレーラーへの過積載または未承認の動物取扱いツールの使用)が確認されたドライバーは、食肉処理施設に是正措置を提出し、追加研修を受けるか、当該施設・企業への家畜輸送を禁止される場合がある
  • 業界の標準モジュールの例:全米豚肉委員会(NPB)輸送品質保証(TQA)プログラム

動物の輸送を最低限に抑えるため、米国内のほとんどの肉牛フィードロットは、食肉処理施設の所在地に設立されてきました(西部、中西部)。大半の豚の肥育農場についても同様のことが言え、食肉処理施設が所在する州またはその近隣に位置します(中西部、東部)。

天候 – トレーラーは天候の変化に対応できるようになっています。例えば、豚用トレーラーは、冬季に使用でき、夏季にはトレーラー内の空気を循環させるために取り外せるサイドパネルを備えています。天候条件に応じて、おがくずやその他の寝わらも使用できます。

生産レベルでのアニマルウェルフェア

  • 農場、牧場、フィードロットでの家畜の取扱いを継続的に改善・モニタリングすることの重要性を認識することは、米国の家畜業界にとって重要な優先事項の1つになっています。
  • 顧客(食肉加工業者、小売業者、食品提供業者など)の要望に応えるため、牛肉ならびに豚肉産業界は独自の自主的なガイドラインをそれぞれ制定してきました。
  • 施設(農場・牧場)の飼育者および従業員が各基準の認定を取得するかどうかは任意です。
    • 肉牛生産者では、農場・牧場の飼育者約10万人がBQAの認定を取得し、米国の肥育牛の85%がBQAガイドラインに従って飼養されている
    • 養豚産業では、7万1000人と1万8000カ所以上の施設がPQA Plus認定を取得しています。
これらの業界基準は様々なトピックに対応(以下に例を示すがその限りではない)
動物の取扱い(ペンのスペース、施設のレイアウト、移動ツールの使用、転倒予防フロアなど)
輸送
適切な動物用医薬品の使用(抗生物質など)
持続可能性(排泄物および水の管理)
記録保管(動物用医薬品の使用追跡、施設チェック実施状況)
バイオセキュリティ
施設内監査(継続的改善を目的とした社内監査および第二・第三者による監査の準備)

食肉処理施設のアニマルウェルフェア

食肉処理施設は、人道的なと畜に関する規則を遵守し、FSISの継続的な規制監督を受けることに加えて、動物の取扱いのモニタリング・改善のため、連邦規則の規定を上回る数多くの手法を有しています。

FSISは安全な食肉製品の生産を確認するだけでなく、これらの動物が人道的に取り扱われ、と畜されてきたことを確認する責任を負います。米国の食品業界において、家畜や家禽のと畜を行う食肉処理施設は、最も厳格な規制および査察の対象となります。

パッカーは多くの理由により動物の取扱い方の重要性を理解しています。特に、顧客および消費者に、家畜が食用としてと畜される前に人道的に取り扱われてきたことを知らせる必要性は大きなものです。適切な動物の取扱いにより、と畜の直前の興奮やストレスを鎮めることができます。と畜の直前のストレスを低減することで、ダークカッターやPSE(フケ豚)などの肉質の問題を抑えることになります。

専門的動物監査証明組織(PAACO)は、食肉処理施設の従業員、ドライバー、監査担当者、施設/企業管理者を対象に、動物の取扱いに関するトレーニングを提供しています。米国において、食肉処理施設で生体を扱う業務(家畜の受領、収容、スタニング)に従事する従業員の大半は、PAACOトレーニングを受けています。トレーニングを受けて認定を取得した後、認定を維持するために、各人は毎年12時間の継続的な教育単位を取得しなければなりません。PAACOは米国において重要なトレーニング/教育プログラムになったため、同機関は、カナダ、南米を含む世界中でトレーニングやその他のイベントを主催しています。
PAACO - Professional Animal Auditor Certification Organization

第三者によるアニマルウェルフェアの監査

米国の中規模から大規模な食肉処理施設の大半は、1年に少なくとも1回、第三者によるアニマルウェルフェアの監査を受けています。

  • これらの監査は、米国の主要な小売業者・食品提供業者の大半に販売するために必要となる
  • 食肉処理施設は、施設のプログラムを評価・改善するために、継続的に(毎日、毎週)社内監査を実施する
  • 動物の取扱いに関する評価可能な項目を含む最も一般的な業界基準には、北米食肉協会(NAMI)のAnimal Handling Guidelines and Audit Guide(動物の取扱いに関するガイドラインおよび監査ガイド)がある。
    • 上記のガイドラインまたは社内のガイドラインに従っている食肉処理施設は、動物の取扱いに関する世界で最も強力な要件およびモニタリングプログラムを有している。
社内監査および第三者監査では、
評価可能な以下の項目を確認する
スタニングまでに鳴き声をあげる動物の割合(%)
動物の移動中に転倒する頭数
使用が許可されている移動ツール(フラッグ、音の出るパドルなど)

これらの食肉処理施設内のプログラムはすべて、動物の取扱いに関する規制の遵守に「追加して」実施されます。すなわち、米国の食肉処理施設の大半は、施設内での動物の取扱いに関して、要求されている以上を実施していることになります。これらの業界基準は任意で規制の対象ではないため、こうした基準を満たすことにより、業界の進歩や柔軟性を高めることができます。

マクドナルドやウォルマートなどの大企業と取引するような食肉処理施設に要求される動物の取扱い基準は非常に厳格なため、米国の食肉処理施設における動物の取扱い設備や手順は世界最高峰といえます。そのため、他の国々で施設を建設または改築する際、米国の施設(生体搬入・係留・スタニングまでの通路など)およびモデル(ビデオモニタリングなど)は頻繁に見本として使用されます。米国にある大半の食肉処理施設の生体搬入・係留からスタニングまでのエリアは、コロラド州立大学のDr. Temple Grandinが設計を監修し、現在、世界中で導入されています。