アメリカン・ビーフの安全性についてトレーサビリティとリコールについて

BSEの発生を契機に、日本では牛の個体識別番号によるトレーサビリティシステムが導入されました。日本のシステムは、生産者の追跡が主な目的になっていますが、アメリカのトレーサビリティシステムは家畜の防疫を主な目的として構築されています(注:民間ベースでは個体識別型のトレーサビリティの取り組みも行われています)。

動植物検疫局(APHIS)のトレーサビリティシステムは家畜の出生/月齢に関する情報のほか、ワクチンや動物用医薬品の接種状況、移動履歴などを記録することで、家畜疾病が流行した際、罹患した家畜と同じ群れにいたことのある家畜に同様の症状が出ていないかを確認し、家畜の疾病拡大を防止しています。

食品のトレーサビリティシステムは、生産、処理、加工、流通、販売等の段階で仕入先、販売先、生産や製造方法などの記録をとり、保管し、食品とその情報を追跡し、さかのぼることが出来る仕組みのことですが、この仕組みそのものが食品の安全を担保するものではありません。

食品による健康被害を食い止めるためには、原料素材や製造過程で食品に問題が発生したときに、迅速に対応できる仕組みが重要です。食品安全検査局(FSIS)はアメリカで市販される食肉製品のすべてを検査しており、検査済み製品に問題が生じた場合のリコール(製品の自主回収)のルールと手順を定めています。

FSISのリコール情報は、健康被害への影響に応じて3つのクラスに分類され、当該製品の識別情報(社名、製品名、ラベル・製品写真、EST番号、製造日・量と出荷エリアなど)が公表・通知されます。最も悪影響が予測される「クラスⅠ」リコールでは、当該製品を受け取ったと信じる理由がある販売店リストも記載されます。予測される被害が大きい場合には、公衆衛生警報を発する場合もあります。

動物用医薬品の規制・監視を行う食品医薬品局(FDA)も食品の使用または暴露がヒトまたは動物の健康に深刻な悪影響を及ぼす「クラスⅠ」リコールに焦点を当て、リコールや警報情報を発します。

USDAリコール分類
クラス
I
製品の使用が健康への深刻な悪影響または死亡を引き起こす可能性がある合理的な確率がある健康被害の状況
クラス
II
製品の使用によって健康に悪影響を及ぼす可能性が非常に高い健康被害の状況
クラス
III
製品の使用が健康に悪影響を及ぼさない状況