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TRADER'S Be & Po

vol.472 Jun.23.2025
 
米国食肉輸出連合会
NEWS CONTENTS
市況ニュース 生体牛の高値更新続く、カットアウトも上昇
ポークロイン価格、夏場へ向けて上昇基調
ワールドトレード 中国、EU産豚肉の反ダンピング調査延長
牛肉供給は世界的な減少へ
ブラジル、口蹄疫の撲滅を宣言
ポーク関連ニュース 豚肉需要増へ向けた新キャンペーン、「味」に注力
トピック USMEFが主要市場で革新的な取り組み
ファクトシート ビーフ(2025年4月)米国の輸出、
と畜頭数・枝肉生産量、飼養動向、日本の輸入量
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市況ニュース

生体牛の高値更新続く、カットアウトも上昇

 
 

牛肉の卸売価格は、4月から5月にかけて大幅に上昇し、5月最終週にはカットアウト総合平均価格(100ポンド当たり)が360.32ドルと最高値をつけた。前週比で7.15ドル高と、週間の上げ幅としては今年最大を記録。この6週間で28.24ドルの上昇となった。

7月4日の独立記念日前後の1週間は、小売での牛肉販売が年間で最も多くなる時期だが、今年は卸売価格が高騰しているため、小売りの販促は牛ひき肉が中心となり、豚肉や鶏肉を使ったグリル料理の増加が予想される。

同週の牛ひき材(90CL)の卸売価格は383.41ドルで、過去最高値を更新しており、今年の独立記念日の連休は、牛肉の国内需要にとって大きな試練となるかも知れない。6月第1週のカットアウト価格は、チョイスが前半3日間で1.18ドル下落したが、木曜日には1.69ドル回復した。

一方、生体牛の現物価格は7週連続で最高値を更新。主要5州の去勢牛の平均価格は229.94ドル、枝肉は368.06ドル。それぞれ前週比で2.97ドル高、6.32ドル高となった。

6月第1週は、水曜日までの取引が南部に集中。生体牛9756頭が220〜228ドルで取引された。他方、ネブラスカでは456頭が生体牛235ドル、枝肉375ドルで取引され、依然としてコーンベルト地帯の取引価格が南部に対して大きなプレミアムを維持している。

 

※2025年6月6日 CATTLE BUYER’S WEEKLY

 
 

ポークロイン価格、夏場へ向けて上昇基調

 
 

4月から5月にかけて苦戦が続いたポークロインの価格は、最近になって上昇傾向に入った。小売業者がメモリアルデーの連休に向けて販促を強化したことが一因だが、この動きは例年6・7月に上昇する季節的上昇とも一致している。

牛肉と鶏肉の価格は前年を大幅に上回っており、夏場に向けた販促継続が難しくなっている。牛ひき肉(81CL)の価格は前年比18%高、鶏ムネ肉価格は同52%高。これに対して、センターカットポークロイン(ストラップオンおよびオフ)は同12〜15%安で取引されている。下図のように、骨なしポークロインは、他の食肉と比べて価格の安定性が高い。消費者の節約ムードが強まる中で、小売業者にとっては魅力的な商材となっており、今後さらに販促機会が増えることが期待される。

 

※2025年6月2日 Pork Merchandiser’s Profit Maximizer

  センターカットポークロインの価格推移
 
ワールドトレード

中国、EU産豚肉の反ダンピング調査延長

 
 

中国は6月10日、欧州連合(EU)から輸入される豚肉製品に対する反ダンピング調査を延長すると発表した。中国商務省は、本件の複雑さを考慮して調査期間を6カ月延長する。調査の終了日は12月16日となると簡潔な声明を発表した。

昨年夏、EUが中国から輸入されるEVに高額の関税を課す方向に動き始めたことに対して、中国はEUから輸入される豚肉・ブランデー・乳製品に対する反ダンピング調査を発表し、貿易摩擦の一つとなった。

EUは昨年10月、中国製EVの輸入に最大35%の追加関税を課した。その後、中国は世界貿易機関(WTO)に提訴し、WTOは今年4月、EUの措置を評価する専門家パネルを設置すると発表しているが、中国とEUは7月に、外交関係樹立50周年を記念する首脳会談を開催する予定だ。

 

※2025年6月10日 FOODMARKET.com

 
 

牛肉供給は世界的な減少へ

 
 

ラボバンク社による世界の牛肉市場に関する最新レポートでは、2025年1月に米国の新政権が発足して以来、予測の困難さと不確実性が世界の貿易市場全体に波及しており、牛肉市場もその例外ではないと指摘。「2025年前半の牛肉価格は上昇傾向にあるが、米国が中国や欧州との貿易紛争に突入すれば、状況は一変する可能性がある」としている。

同社のシニア・アナリストは、「第1四半期のEUの牛価格は、大幅な上昇を記録した。域内供給が縮小する一方で、需要が堅調に推移しているためだが、これは北米の価格上昇と同調している」という。

EUでも米国でも、病気と害虫が牛の供給に影響を及ぼしている。「英国ではブルータングが牛群に影響を与え続けている一方、メキシコでは新大陸スクリューワームが発生し、米国が生体牛の輸入を禁止。牛の供給が歴史的に少ない中での動物衛生上の脅威は、牛価格のさらなる上昇に繋がる可能性がある」と述べている。

2025年の世界の牛肉生産量は、前年比2%の減少が予想される。ブラジルの縮小幅が最も大きく5%減、NZは4%減と推定され、EU・米国・中国も生産縮小が予想されている。

一方、米国が導入した相互関税は、多くの国々で7月上旬まで保留され、米中間の関税引き上げは8月上旬まで一時停止となっている。しかし、中国は関税だけではなく、依然として米国の輸出認可工場の登録を更新していない。両国の交渉が長引くにつれて、牛肉の貿易量は世界中に再配分され始めている。

同アナリストは、「メディアは関税の賦課に注目しているが、これは前座に過ぎないのではないか。米国は、各国と期限付きで貿易協議に入り、結果的に過去に例がないような多くの貿易協定が結ばれた。関税問題は多くの問題を引き起こしたが、貿易戦争の全容はまだ明らかになってない。本当の問題は世界の貿易力学の変化がもたらす影響にある」と指摘している。

 

※2025年6月6日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
 

ブラジル、口蹄疫の撲滅を宣言

 
 

ブラジルは、ワクチン接種をしなくても口蹄疫(FMD)が発生しない「FMD清浄国」として、国際獣疫事務局(WOAH)から認定された。豪州の『ビーフ・セントラル』紙は、「この進展は国際的な牛肉貿易に大きな影響を与えるものであり、ブラジルが初めて米国や豪州産牛肉の市場、例えば日本や韓国、さらにはEUへのアクセスを得る可能性がある」と報じた。

ブラジルはすでに世界最大の牛肉輸出国であり、昨年は290万トン、約130億ドル相当を輸出している。ただし、同国の輸出は中国に大きく依存しており、牛肉輸出全体の約半分を中国向けが占めている。

ブラジル牛肉輸出協会のロベルト・ペロサ会長は、「今回の動きはブラジルにとって画期的な出来事であり、新たなビジネスチャンスを生み出すものだ。すでにフィリピンとインドネシアが、新たな衛生ステータスの下での牛内臓肉の輸入に関心を示している」と述べている。

同紙によると、日本は7月にブラジルへと調査団を派遣する予定だという。しかし、日本や韓国への輸出に必要な手続きや輸入プロトコルの整備には時間が必要なため、実際の貿易開始まではまだしばらくかかると見られる。

 

※2025年6月6日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
ポーク関連ニュース

豚肉需要増へ向けた新キャンペーン、「味」に注力

 
 

全米豚肉委員会(NPB)は、豚肉需要のさらなる拡大に向けた新しいキャンペーン「Taste What Pork Can Do」を開始した。米国の消費者に、より多くの食事に自国産の豚肉を取り入れてもらうことが狙いだ。

過去20年間で、米国の豚肉産業は大きく拡大してきたが、その多くは輸出市場の拡大と人口増加によるものだった。2000年の豚肉生産量は189億ポンドだったが、2024年には278億ポンド(47%増)に増加。豚肉輸出量は、同じ期間で約13億ポンドから71億ポンドに増加している。

米国の国民1人当たりの豚肉消費量は比較的安定しており、枝肉重量ベースで64ポンド(小売重量ベースでは50ポンド)前後で推移している。豚肉業界にとっての課題は、外食産業よりも小売業での露出がはるかに多いことだ。

外食支出は爆発的に増加している。4月の消費者の外食支出は前年比7.8%増、小売支出は同2.7%増だ。長期的にみても、2000年の外食産業における年間支出額(名目)は3280億ドル、食料品店での支出額(同)は4020億ドルだったのに対して、2024年は外食支出1兆1000億ドル、食料品店支出8900億ドルと、シェアが完全に逆転している。

外食産業での豚肉使用は、ベーコンが圧倒的人気であり、メニューへの浸透度が最も高い。次いでソーセージ、3位はハムだ。その理由は「風味」と「利便性」。低脂肪ダイエットや"the other white meat.(豚肉、もう一つの白身肉。)"を訴求する時代はすでに終り、「味」に焦点を当てて新たなキャンペーンを展開するとNPBは述べている。
キャンペーンの詳細は下記より。
NPB Invites Gen Z and Millennials to Taste What Pork Can Do™ - Pork Checkoff

 

※2025年6月2日 Pork Merchandiser’s Profit Maximizer

  米国内の豚肉消化量(国民一人当たり・枝肉換算)
 
トピック

USMEFが主要市場で革新的な取り組み

 
 

テキサス州フォートワースで開催された米国食肉輸出連合会(USMEF)の春季会議では、貿易上の課題を克服するために、海外事務所のシニア・スタッフがそれぞれの主要市場での新たな取り組みを報告した。

アジア太平洋地域担当副会長のヤン・ジヘイ氏は、「中国への米国産豚肉および牛肉の輸出が高関税やその他の障壁によって大きく制限されている現状を受けて、従来中国で人気のあった部位を他の市場に展開する取り組みを強化している」と述べた。

たとえば、中国での輸出工場認定の不確実性や関税の上昇によって流通が難しくなったショートプレートについては、「韓国の大手小売業者と提携し、販促キャンペーンを実施した。中国との貿易停滞が続くようであれば、東南アジアの輸入業者や流通業者に対して、より多くの米国産ショートプレートが提供されることになるだろう」という。

さらに、韓国のミールキットメーカーや日本の流通業者と連携して、米国産豚の塊を使用した商品開発・販売促進を行っており、またポークタントリミングは日本のカジュアルダイニング業態で提供される人気メニューとして積極的にプロモーションが行われているという。

メキシコ・中米・ドミニカ共和国担当ディレクターであるジェラルド・ロドリゲス氏は、メキシコが米国産赤身肉の最大の輸出先に成長してきたことを説明するとともに、現在はかつてないレベルの競争に直面していることを説明。

同氏は、米国の赤身肉を他国の製品と差別化し、そのユニークな特性について消費者に啓蒙することがこれまで以上に重要であるとの判断から、次世代の消費者に米国産赤身肉のロイヤリティを確立させることに重点を置き、いくつかの新しいプログラムを開発。移動式グリル・アカデミーはその好例で、メキシコ全土で米国産赤身肉の特長への理解を普及しているという。

ラテンアメリカ代表のホメロ・レシオ氏は、コロンビアの米国産牛肉に対する規制を克服するための取り組みを報告。この規制は、米国内の乳牛から高病原性鳥インフルエンザが検出されたことに関連するもので、一時は米国の14州で生産された牛肉にまで拡大されたが、2024年9月に解除された。この規制が他国産の新たなビジネスチャンスとなったこともあり、その影響を払しょくするために、米国産牛肉に対する顧客の信頼を回復してシェアを奪還した取り組みを報告した。

 

※2025年5月30日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
 

ビーフ・ファクト・シート