03アメリカンビーフ × フレイル
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肉しっかり噛めますか?長寿は歯の健康から

フレイルから健康に戻るために

「年を取って弱るのはしょうがない」とあきらめてはいけません。フレイルの特徴のひとつに、「可逆性」(元の状態に戻ること)があります。

肉などをしっかり食べる、体を動かす、社会との交流を保つといった努力をすれば、元の健康な状態に近づくことができます。医師のアドバイスも有効ですが、何よりもご本人が自分の今の状態に気付き、必要な改善策をとることが肝心です。

歯が弱っても肉を避けないこと

健康長寿でいるためにはさまざまなポイントがありますが、口腔機能の維持がまず重要だと私は考えます。
口腔機能の低下、オーラルフレイルは、身体的フレイルの一種。年を重ねると、若いときと比べて咬合力(噛む力)が3分の1にまで落ちます。咬合力が落ちるとかたい食材を避けるようになり、噛む力がますます弱まるという悪循環に。

肉は、口腔の筋肉を鍛え、噛む力をキープするのに最適な食材のひとつ。「歯が悪いから肉は食べない」という考えは今すぐやめて、「歯が弱っているからこそ、工夫して肉を食べなければ」と考えるようにしてください。やわらかいものだけの食生活では、これから半年後も1年後も、肉など噛み応えのある食材は食べられないまま。栄養のバランスが崩れ、体の状態が今よりよくなることを望むのは難しいでしょう。

歯科医院での定期的なメンテナンスを怠らないことも必要です。口腔環境を改善するだけで以前より食事が楽しめるようになり、フレイルから健康な状態に戻ったという例もあります。

いくつになっても肉は楽しめる

80代後半や90代の方で、ある程度自立した生活ができている方のほとんどが、肉が好きな傾向にあります。「健康のために肉を食べなくては」と思っているのではなく、肉が好きだから、食べたいからといった理由で普段の食事メニューに組み込んでいるようです。

好きな肉をいつまでも食べるためには、噛みしめられる歯を維持すること、そして安定した嚥下機能(のみこむ力)を保つことが絶対条件です。
いくつになっても肉をはじめ、好きなものを心置きなく食べられるようにすることを目標に、ぜひ今日からできることを始めてください。

村田先生のフレイル対策レシピ04アメリカンビーフの野菜巻きしゃぶしゃぶ

肉など噛み応えのある食材を食べること、そして食事のときはよく噛むように心がけることはとても重要です。今回は、しゃぶしゃぶ用のアメリカンビーフを使用するので、厚みのある肉が苦手な方にも食べやすい一品です。食が細めな方には、しっかり食べられるように、「一人四個ずつね」などとご家族が声がけをするのもいいでしょう。

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材料(2人分)

  • アメリカンビーフ(牛肉)肩ロース(しゃぶしゃぶ用)10枚(約300g)
  • にんじん1/3本
  • ねぎ1/2本
  • 水菜2茎
  • 豆苗1/3パック
  • だし5~6カップ
  • 市販のごまだれ、ポン酢じょうゆ各適宜

作り方

  1. にんじんは皮をむいて千切り、ねぎは長さ5~6cmに切って白髪ねぎ、水菜は長さ7 ~ 8cmに切る。豆苗は根元を切り落とす。それぞれ10等分に分ける。
  2. アメリカンビーフを1枚ずつ広げ、(1)を巻く。
  3. 土鍋にだしを入れて強火で熱し、(2)をさっとくぐらせ、好みのたれをつけていただく。

※口腔機能が弱っている方、かたいものが食べづらい方は、やわらかく煮てください。一口で食べる、または噛み切るなどが難しい方は、小さく切ってから食べることをおすすめします。

教えてくれた人

東京大学高齢社会 総合研究機構
飯島 勝矢教授

老年医学を専門とする医学博士。
各地で講演を行いフレイル対策を広めている。

レシピ開発

管理栄養士
村田裕子先生

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