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トランプ大統領が司法省(DOJ)に牛肉価格高騰に関する加工業者の調査を要請したことに対して、業界関係者の多くは価格操作の根拠はないと指摘している。
食肉・家きん類業界を代表する北米食肉協会(NAMI)のジュリー・アンナ・ポッツ会長兼CEOは、「牛肉の消費者価格は高騰しているが、牛価格が過去最高水準にあるため、パッカーは赤字を計上している」と述べ、牛の供給不足と強い需要によって、パッカーは1年以上にもわたって赤字経営を強いられていると強調した。
同氏は、「牛肉産業は厳しく規制されており、市場取引も透明だ。USDAのデータ自体が、牛肉加工部門の壊滅的な損失を裏付けている。専門家はこの状況が2026年まで続くと予測しており、事実に基づく議論が必要だ」と語った。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、12日付の社説「Beef Is Now Political Red Meat」で、サーロイン価格が急騰した真の理由を知るべきだとし、干ばつと繁殖農家のコスト上昇によって、米国の牛群が縮小を続けていることに触れている。また、メキシコ産生体牛の輸入がNWSの発生によって停止されたことで、供給がさらに絞られ、生体牛価格は過去1年で24%急騰し、パッカーの利益率を圧迫していることについても解説している。
オクラホマ州立大学の経済学者は、「パッカーは現在の市場で最も深刻な打撃を受けているセクターであり、低い利益率と限られた牛供給によって巨額の損失を被っている。処理する牛1頭あたり数百ドルの損失、全体での損失は数百万ドルにもなる。もしパッカーが本当に市場を支配できるのであれば、現在のような牛価格の記録的高値も起こらず、損失も出していないはずだ」と断言。
また、「パッカーのこうした損失によって、工場閉鎖などが懸念される。今回のような提案は、生産者と消費者の双方に悪影響を与え、牛肉産業を機能不全に陥らせてしまう」と警鐘を鳴らす。
パッカーには供給を支配する力がないことは明らかであり、価格を操作する能力も非常に限られている。これまでにも、複数の研究による調査結果が以下の事実を証明している。
❶ パッカーの市場支配力はごく限られたものであり、良くも悪くも肥育牛価格に与える影響は小さい。
❷ 「規模の経済」によるコスト削減は、市場支配力の悪影響の、少なくとも10倍以上の効果をもたらす。牛肉産業の市場構造は費用効率が高く、生産農家と消費者は、より高い生体牛価格・低い牛肉価格という形で純益を得ている。
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