日本では長い間、歳を重ねると粗食に努めることで健康で長生きできるという「粗食長寿」説が浸透しています。
しかし、これは大きな誤解で、
実は粗食が低栄養を招き、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなる恐れがあるのです。
20世紀初頭、日本人の動物性たんぱく質の摂取量は5%、95%が植物性たんぱく質でした。
時代と共にその摂取量は変化し、1979年に1対1になっています。これは、日本人が平均寿命世界一になった時点と一致します。
出典:柴田博『生涯現役「スーパー老人」の秘密』技術評論社、2006
日本人の平均寿命が50歳を超えたのは、
1947年。この時代から徐々に動物性たんぱく質の量が増加している。
日本の長寿者の特徴を調べてみると、たんぱく質、特に動物性のたんぱく質の割合が高いことが分かります。たんぱく質は、心臓をはじめ各臓器、筋肉、神経伝達組織など、体を形づくり、生命を維持する上で欠かせない栄養素。特に、肉に含まれる動物性たんぱく質が免疫力をあげるのです。肉に含まれるたんぱく質の一種である、アルブミンは感染症、脳卒中、心筋梗塞に効果的であり、アルブミンが低い人ほど早期に死亡します。肉の摂取が高くなるほど、免疫力が高くなり、病気のリスクが低くなるのです。
出典:Shibata H et al:Nutrition and health 8:1651992
センチナリアンとは100歳を超えるお年寄りのこと。
日本人の平均と比べて動物性たんぱく質の割合が高い。
肉は免疫力をあげるほかに、様々な病気を予防する成分が豊富に含まれています。例えば、精神安定を保つ役割があるセロトニンを増やす必須アミノ酸のトリプトファンが豊富に含まれており、脳神経機能を高めて、うつ予防に役立ちます。また、60歳を過ぎた頃から減ってくる脂肪酸の一種であるアラキドン酸は、学習能力や記憶など能の働きに重要な役割を果たし、ボケ防止に効果的です。
その他にも、血圧を下げる作用があるタウリン、そして動脈硬化を予防するオレイン酸も含まれています。また、エネルギーの代謝や酵素の働きを助けるビタミン・ミネラルも含有しているので、皮膚や粘膜の角化を防いだり、ガンの予防にも役立ちます。
脂肪の一種であるコレステロールや飽和脂肪酸が下がると脳卒中や脳梗塞になる可能性が高くなるので、脂肪不足も問題です。
沖縄県浦添市に次ぐ長寿市であった小金井市では、
コレステロール値が高いほど死亡率が低い。
主として、どの肉も免疫力を向上させますが、脂肪の量のちがいにより効果が異なります。
従来、美味しい食べ物は体に悪い、美食は太りすぎるので短命になるといわれてきましたが、美味しいものを味わうことこそが腸内細菌を活性化し、免疫力を上げる最大の秘訣です。 肉には旨味成分と多幸感をもたらす至福物質「アナンダマイド」が多く含まれているので、精神的な観点からみても健康に良い食品です。
中高年は年を重ねるにつれ、若い世代より肉を食べる量が減ってしまうので意識的に量を増やしていかなければなりません。一日に約60〜100g摂取することが目安です。 その点、アメリカン・ビーフは赤身とサシのバランスが良く、たんぱく質の割合も十分。また、やわらかくて食べやすいので、肉の摂取量が少ない高齢者には最適です。 健康で長生きするために、おいしく、栄養がある肉をよく食べることを心がけていきましょう。
「日本人の食は欧米化している」「粗食は健康に一番」という“健康常識”にダマされてはいけません。カロリー摂取量が少ないと、免疫力の低下や生活習慣病をまねき、うつや認知症の危険性も高くなるのです。病まない、ボケないために、本当の“健康常識”を知れる一冊。