

まず、2003年12月に米国でBSEに感染した牛が見つかったことで、米国から日本への牛肉の輸出がストップしてしまったことにさかのぼります。日本でも01年にBSE感染牛が発覚し、すべての牛の脳を調べて、BSEの原因物質が含まれていないかどうかを確認する全頭検査が行われるようになっていました。それと同時に、牛肉の安全性確保についての科学的議論が、03年に発足した食品安全委員会のプリオン専門調査会で始まっていたのです。
その後、BSEの原因も科学的な解明が進み、BSE対策も的確になされるようになり、食品安全委員会は05年、「肉骨粉を与えない、特定危険部位を取り除くといったBSE対策を続けることにより、日本人がBSEが原因で亡くなることは全人口に対して1人に満たない」と結論付けました。
つまり、適切なBSE対策こそがBSEの発生を防ぐのであり、全頭検査は科学的には意味がないということも示されたのです。ただし、日本ではBSEに感染した牛の中で、21カ月齢の牛が最も若かったことから、20カ月齢以下の牛に限って全頭検査をしなくてもよいことになりました。
ところが、科学的には意味がないとはいっても全頭検査を取りやめると、全頭検査こそがBSEの発生を防ぐ手段であると固く信じている国民を混乱させてしまいます。そこで、20カ月齢以下の牛の検査の費用を3年に限り、国が補助することになり、結果として全頭検査が継続されることになったのです。さらにその後には、全頭検査を実施する地方自治体が費用を負担して継続し、現在に至っています。
このように、実態として全頭検査は続いているのですが、日本の法的根拠に照らせば20カ月齢以下の牛については全頭検査はしなくてもよいのです。もとより全頭検査をしていない米国産牛肉でも20カ月齢以下であれば、日本では全頭検査をしなくてもよいということで、06年より日本への輸出が再開しました。
とはいえ、米国は日本との約束の20カ月齢以下という条件を守るために、出荷頭数が極めて限られてしまうことにもなりました。
これこそが、米国からの輸出が再開されたのに、日本のスーパーなどで米国産牛肉をめったに見ないというワケです。食品における安全性の確保は、絶対に譲れないことです。しかし、安全性が科学的に確認されているのに、米国産牛肉が日本のスーパーに並ばないのは、とても残念な気がしてなりません。